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銀行融資で担保になるものの種類

 2018/02/20 銀行融資   39,136 Views
担保
 

銀行の融資を申込んだ場合、担保を要求されることがあります。

担保とは、債務者が債務返済を履行しない場合に備えて債権者に提供されるもので、債権の弁済を確保する手段となります。

担保はいわゆる保険的な役割を果たすもので、万が一返済不能になった場合には、債権者(銀行)はあらかじめ差し出された担保を処分することで、債権回収を行います。

担保と聞くと多くの方が「不動産担保」を思いつくのではないでしょうか?
不動産担保は担保の代表といえるものですが、もちろん不動産担保だけが担保ではありません。

様々な担保の種類とその仕組みを理解しておくことで、銀行融資に対する交渉もスムーズに進展することもありますのでぜひ知っておきましょう!

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物的担保と人的担保

不動産担保は「物的担保」と呼ばれています。その名の通り「物」を担保として提供するものです。これに対して「人的担保」というものがあることをご存じでしょうか?

「人」を担保として提供する、というと何か問題のあるように思えますが、一般的に「保証人」と呼ばれるものが「人的担保」です。

債務者が万が一返済不能になった場合に、債権の保全を行うのが「保証人」であり、「人的担保」の代表が「保証人」となります。

保証人が債務者に代わって借金の返済を行うことを「代位弁済(だいいべんさい)」といいます。

一般的には「担保」「保証人」という使い方を行っていますので、このニュアンス程度をつかんでおけばOKでしょう。

銀行融資で担保になるものの種類

不動産担保

銀行融資の担保として一般的なものが、土地や建物を担保とする「不動産担保」で、誰もが聞いたことがあるでしょう。事業融資・運転資金設備資金だけでなく、住宅ローンといった個人ローンにも幅広く活用されています。

不動産担保の担保物件(土地や建物)には「抵当権」「根抵当権」といった権利設定が行われます。「抵当権」「根抵当権」は登記簿謄本の「乙区」に記載され、その権利に基づき債務履行を行うことになります。

不動産担保では不動産の価格評価とともに、「乙区」に記載される順位関係も重要になってきます。つまり「乙区」に先順位の抵当権や根抵当権が設定されていると、その分担保としての価値も低くなります。

抵当権とは?
抵当権は不動産を目的として設定される権利のことです。設定された土地や建物などの使用・収益は所有者が継続して行います。金融機関は債務者が約束通りの返済履行を行わない場合には、設定された不動産を競売にかけ、それを債権回収に充てることができます。一般的な質権と異なり、債務者は不動産の使用・収益を継続することができます。

根抵当権とは?
根抵当権とは、抵当権の一種で特定の融資を担保するものではなく、限度額を定めて一定の範囲にある複数の融資を担保することができるものです。金融機関との間で繰り返して融資を受ける場合によく用いられる方法です。

有価証券担保

担保として取扱される有価証券には、次のようなものがあります。

  • 株式
  • 受取手形
  • 公債
  • 社債

一般的には有価証券の担保設定のためには、有価証券担保差入書を金融機関に差し出すとともに、有価証券の現物を金融機関に預ける方法をとります。

動産担保

不動産に対して「動産」を担保とする融資も登場しています。一般的にはまだまだ知名度は広まっていませんが、ノンバンクだけでなく、最近では大手銀行も動産担保融資を取り扱うようになっています。

動産担保の種類としては、次のようなものがあります。

  • 船舶
  • 自動車
  • 航空機
  • 牛などの畜産物

指名債権担保

「指名債権」とは債権者が特定している通常の債権のことを指します。担保として取り扱う指名債権としては次のようなものがあります。

  • 預金債権
  • 損害保険金
  • 売掛金
  • 工事請負代金
  • 記名式信託受益権

このうち一般的なものが「預金債権」でしょう。「預金担保」として取り扱われており、定期預金などを担保として質権設定しておけば、債権と相殺できますので、担保としての信頼性はもっとも高いといえるでしょう。

損害保険金を担保としている例としては、住宅ローンを利用する際に火災保険に質権設定を行う事例がわかりやすいでしょう。売掛金などの「売掛債権担保融資」は最近ノンバンクで盛んに取り入れられています。

担保と金利の関係

一般的に考えると「担保」は債権者(銀行など)にとっては債権を回収する可能性が高くなる材料となります。そのため有担保の借入と無担保の借入では、有担保はリスクが低く、無担保はリスクが高いと判断されます。

リスクが高いということは、それだけ高いリターンを債権者側は求めることになります。その結果貸出金利を高く設定する必要があるのです。

逆にリスクが低い場合には、貸出金利を低くすることも可能になります。そういう意味でも、提供できる担保があるということは、債務者にとっても有利な材料となります。

不動産の担保評価額の測定方法

一般的にみて、不動産の担保価値としては「建物」よりも「土地」が高く評価される傾向にあります。「建物」は時間が経過することにより少しずつ劣化する、つまり価格が減少するためです。

不動産のおおまかな評価額を知る方法は次の通りです。

土地の評価

  1. 対象物件の国税庁路線価(1㎡あたり)を調べる
  2. 物件の面積(㎡)に上記の路線価をかける

例えば 土地面積100㎡×路線価15万円=土地評価額1,500万円 という感じです。

建物の評価

  1. 1㎡あたりの建築単価を調べる
  2. 建築単価に建物延面積(㎡)をかけることで「現在同じ建物を建築した場合の価格」が算出される
  3. この建物価格に現在価値割合(1-建物経過年数÷減価償却耐用年数)をかける

例えば、鉄筋コンクリート造りの病院建物、建築後15年経過、耐用年数39年、建物床面積2,000㎡、建築単価20万円の建物では2,000㎡×20万円×(1-15年÷39年)=2億4,615万円(1万円未満切り捨て)となります。

減価償却耐用年数とは「その建物が最大で○○年間評価できる価値があるか」というものです。主に建物の造り(木造か、鉄骨か、鉄筋コンクリートか)などにより決定されています。

建築単価や耐用年数は検索サイトなどで調査することができます。また知り合いに不動産業者や建築業者などがおられる場合には、正確な相場を知ることもできるでしょう。

担保時価と掛け目

上記で導かれた価格は「時価」と呼ばれるものです。これに対し担保としての評価は「時価」に一定の「掛け目」を掛けることで導かれます。
例えば上記の土地の価格「1,500万円」がそのまま担保としての評価額となるわけではありません。

一般的には「掛け目」は時価の70%と設定されています。
つまり上記の土地の例では「1,500万円×70%=1,050万円」が担保評価価格となりますので注意しましょう。

担保をあてにしないこと

これらの担保は銀行融資を申込むうえで、プラスのアピールとなることは間違いありません。万が一返済不能になった場合の保険をかけておくことは、銀行側にとっても審査ではプラスとなります。

しかしこれは返済が可能な能力を備えていることが前提となります。あくまで事業収入などからの返済を「担保」する意味合いがあるのです。

かつてバブル経済が絶頂期だった頃、銀行は不動産などの担保を背景にして積極的に融資を行っていました。その中にはあまりにも担保に頼りすぎた審査を行った事例も少なくなかったのです。

「担保があるから万が一返済不能になっても問題ないだろう」という推測により、あいまいな審査で債務者の返済能力を超えた貸出を行うケースも多々ありました。

その後バブル経済が崩壊して、不動産の価格が一気に下落していくことで、差し出されていた不動産の担保価格も急降下することになります。

その結果回収不能となった債権が続出し、いわゆる「不良債権問題」を引き起こしてしまいました。その一因が「担保に頼った審査」にあったことは明白であるといわれています。

そして現在「不良債権問題」も一段落し、長引く低迷期から多くの銀行が脱出しています。

同じ過ちを繰り返すわけにはいきませんので、担保はあくまで「担保」である姿勢を明確にしている銀行がほとんどです。審査を受ける場合には、あくまで「自己の収入からの返済能力が問われる」ことを覚えておきましょう。
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ライター紹介 ライター一覧

若松 貴英

若松 貴英

保有資格:2級ファイナンシャル・プランニング技能士(中小企業主資産相談業務)・AFP(日本FP協会認定)/金融業務検定(法務上級)/銀行業務検定(法務2級・財務3級・税務3級)など。銀行勤務時は融資のスペシャリスト」(悪く言えば「融資しか知らない」)として勤務していました。そのため「借入」に対しる知識や経験には自信があります。