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新時代の資金調達方法「オンラインレンディング」とは?

金融用語集   2,462 Views

近年、様々な業界で「人工知能=AI」を活用したサービスが登場しています。街中でも人口知能(AI)を売りとしたサービスがいたるところで見られるようになりました。

急速なインターネットの普及とあわせて、

人工知能(AI)の活用は、新たな時代のサービスとしては欠かせないものとなっています。

金融業界においても人口知能(AI)を活用した資金調達方法=「オンラインレンディング」と呼ばれるサービスが注目を集めています。

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オンラインレンディングとは?

「オンラインレンディング」は、会計データなどを元に「人工知能(AI)」が与信モデルを作り、オンライン上で全ての手続きが完結する融資サービスです。「オンライン融資」とも呼ばれています。

オンラインレンディングは「FinTech(フィンテック)」の技術が発展してきたことから注目を集めている新しい融資システムです。

FinTech(フィンテック)とは
「Finance(金融)とTechnology(技術)を組み合わせた造語で、「ファイナンス・テクノロジー(フィナンス・テクノロジー」の略です。「ICTを駆使した革新的(innovative)あるいは破壊(disruptive)な金融商品・サービスの潮流」といった意味で使われています。

「オンラインレンディング」では人工知能(AI)が会計データなどの顧客データをもとに融資モデルを作成、借り手側のクラウドデータを活用・分析することによりスピーディーな審査と融資実行が可能になっています。

従来の銀行融資では、財務諸表や事業計画書などの提出された書類を分析して融資審査を行ってきました。いわば「オフライン」での手続きです。そのため審査時間が必要となり、急な資金需要に対応することが難しいケースもあります。

一方、オンラインレンディングでは、従来は「人」が行っていたデータ分析を人口知能(AI)が担います。そのためよりスピーディーな審査対応が可能になります。

アメリカや中国では以前から定着しており、日本でも近年、急速に整備されるようになっている新時代の融資システムといわれています。

なぜアメリカ・中国が先行したのか?

オンラインレンディングは米国・中国で先行して普及してきたサービスです。最も早かったのは米国といわれ、そのきっかけは2008年の「リーマン・ショック」とされています。

金融不振の余波で銀行が融資を縮小した際に、そのすき間を埋める形で誕生したのがオンラインレンディングです。

一方、中国では、世界市場に売って出るためにモバイル決済のサービスが一気に広がったことから、そのデータを活用する形でオンラインレンディングも普及・定着しました。

オンラインレンディングが広がってきた背景には、AIの進展やクラウドサービスの普及があります。

特に、会計ソフトやモバイル決済をはじめ、クラウド上にデータを蓄積するサービスが急速に広がってきたことで、データを与信に利用するオンラインレンディングが可能になり、日本でも新たな金融サービスとして注目を集めています。

オンラインレンディングのメリット

①スピード

オンラインレンディングの最大のメリットは、スピーディーな審査対応が可能という点です。従来の銀行などの金融機関、日本政策金融公庫や各自治体の制度融資などは、準備しなければいけない資料も多く、その審査も「人」が行います。長ければ申込から融資実行までに数ヶ月を有することもあります。

一方、オンラインレンディングでは、日々蓄積された会計データなどを「人口知能(AI)」が分析して融資可能かどうかを判断しています。審査結果が素早く提示されますので、急な資金需要でも十分対応が可能になっています。

②担保・保証人不要

担保や保証人が不要なサービスが多い点もメリットの一つです。従来の審査システムでは「返済能力」について正確に判断してもらうことが難しい中小企業や個人事業主なども多くありました。

「借入実績」が重要視されるあまり、売上・利益からの「返済能力」を十分に見てもらえないケースも多くあります。その補てんの意味で担保や保証人を重視する傾向もあります。

これに対し、オンラインレンディングでは会計データなどにあわせて日々の取引データを元にAIが分析・判断を行います。あくまでデータからの「返済能力」がポイントとなりますので、担保や保証人を求める必要性は少なくなります。

中小企業や個人事業主にとっては資金調達の幅が広がり、また金融機関側にとっても担保や保証人に対する審査の手間が省けることになります。

オンラインレンディングのデメリット

①金利の高さ

一方、オンラインレンディングの最大のデメリットは金利の高さです。融資実行までのスピードが早い反面、AI導入・維持コストが必要となることからも、金利は高めに設定されています。

金利面は契約金額・審査内容などによって左右されます。これまでの従来の資金調達手段と一概には比較できないのが、難しい点です。まずはサービス提供機関の担当者に相談してみるとよいでしょう。

②取引実績

オンラインレンディングには会計データや銀行口座の出入金データなど「一定期間以上蓄積されたデータ」が必要となります。逆にいえば、ある程度の一定期間、サービスに紐付いたサービス(銀行口座で入出金を使用するなど)を使用する必要があります。

実際、融資を受けるにあたって最低限必要な取引実績を定めている金融機関もあります。

例えば、取引が皆無の銀行窓口で利用したいと申し出ても、かなりの確立で敬遠されてしまうでしょう。従来の融資サービスと比較しても、サービスの利用開始からすぐに融資を受けるのが難しいのがデメリットとなっています。

オンラインレンディングの種類と代表的サービス

「オンラインレンディング」にはいくつかの種類があります。主な種類の仕組みと代表的サービスを見てみましょう。

①AIスコア・レンディング

AIスコア・レンディングは個人や企業の様々な情報から、融資を返済する能力、いわば信用力をスコアリング(数値化)して判断を行うサービスです。融資可否の判断に合わせて、金利や融資金額といった条件面も判断されます。

スコアリングされる項目には様々なデータが活用されます。

  • 年齢・学齢・年収・住所などのプロフィール情報
  • 住宅の有無や投資歴などの資産に関する情報
  • SNSでの発言・行動や友人とのつながり
  • インターネットサイトでの商品の購買状況

このようにこれまでの融資判断には使用されなかった種類の膨大な量のデータを分析して精確に個人や法人の信用力をスコアリング化してきます。

またスコアリングの数値は、一度決定された後でもスコアアップが可能です。状況次第ではより好条件で融資を受けることも可能になります。

J.Score(ジェイスコア)のAIスコア・レンディング

「J.Score(ジェイスコア)」は日本で初めて人工知能を使ったAIスコア・レンディングをはじめたことで話題を集めています。運営会社の「株式会社J.Score(ジェイスコア)」はみずほ銀行とソフトバンクによって設立されたFinTech企業です。

従来の個人向け融資に比較した低金利(年0.8%~15.0%)と最大1,000万円の高限度額が魅力で、大手先のサービスとして安心して利用することができます。自分の信用力をAIスコアという数字で確認できますので、一度スコアリングだけでも試してみるといいかもしれません。

LINE Pocket Money(ラインポケットマネー)

スマホアプリとして最も知名度の高いの「LINE]。その「LINE」を利用してお金を借りることのできるサービスが「LINE Pocket Money(ラインポケットマネー)」です。

2019年の夏にサービスを開始したばかりのサービスで、運営会社の「LINE Credit株式会社は」、LINE Financialやみずほ銀行、オリコカードで有名なオリエントコーポレーションが共同で出資した企業です。

従来の信用情報に加え、みずほ銀行やオリコが持っている与信審査ノウハウを元に、一人一人の状況に応じて貸付金利と支払い可能額が決定されます。

プラットフォームとしてのLINEから収集できるデータを使い信用力を分析し、その結果にもとづいて融資を行うというサービスです。

トランザクションレンディング

「トランザクションレンディング」とは、特定のプラットフォーム内での「実際の取引状況データ」から信用力を測定し融資可否を判断するサービスです。「特定のプラットフォーム」には「楽天市場」「Amazonマーケットプレイス」などがあります。

これらのサービスに出店して、商品を販売しておけば、日々の売買のデータは販売や決済のプラットフォームを提供している楽天やamazonとも共有することになります。

  • サイトのPV数の変化
  • 決済回数
  • 売上状況の変化
  • 客単価の変化

これらのモール内のデータを分析することで、その店舗のリアルタイムの返済能力を即時に、かつ正しく測定できる、という仕組みになっています。

利用者側(借入側)としても、データはプラットフォームがすべて確認できますので、あえて資料を作成する必要がなく、素早い資金調達が可能になります。

楽天スーパービジネスローン

「楽天スーパービジネスローン」はECプラットフォーム「楽天市場」に出店している店舗向けのビジネスローンです。

楽天の店舗内のデータを判断材料とする「トランザクションレンディング」が導入されています。店舗側(出品者側)としても資料を作ったりする必要がありません。

審査側は、ほぼリアルタイムのデータを確認できることになります。急に売り上げが上がって在庫不足になったといった事象も即時に確認できますので、在庫確保目的の融資などを可能と判断することもできます。

③バランスシートレンディング

「バランスシートレンディング」とは、インターネットバンクやクラウド会計ソフトから確認できる入出金の状況データを判断材料として、融資の審査を行うオンライン融資の一種です。

  • クラウド会計ソフト内の入出金の情報
  • 銀行口座の入出金の情報

これらの情報は先の「トランザクションレンディング」で用いるプラットフォーム内の取引データの結果として生まれるデータと同じ性質を持ちます。ただし「バランスシートレンディング」の方が、より幅広いデータを参考とする傾向があります。より「網羅性」が高いサービスといえます。

MFクラウドファイナンス

「MFクラウドファイナンス」は「株式会社マネーフォワード」によって運営されている融資サービスです。「株式会社マネーフォワード」はクラウド会計ソフトや家計簿アプリなどの充実したサービスを提供している会社です。マネーフォワードが管理するデータを提携金融機関に提供することで、提携金融機関の与信審査に活用されています。

  • MFクラウド会計
  • MFクラウド確定申告

これらのサービスを利用している事業者は、「MFクラウドファイナンス」と提携している金融サービスの利用も検討してもよいでしょう。

Money Forward BizAccel(マネーフォワード ビズアクセル)

「株式会社マネーフォワード」の子会社「マネーフォワードファイン株式会社」が提供を始めたMFクラウドシリーズの個人事業主ユーザーに対するサービスです。上記の「MFクラウドファイナンス」のいわば個人事業主版です。

法人とは異なり、事業規模が小さく実態把握が難しい側面を持つ個人事業主であっても、柔軟な資金調達が可能になっています。

「マネーフォワード クラウド確定申告」のデータや、金融機関の入出金データに基づき融資審査を行い、最短3営業日で融資が受けられるオンライン融資サービスで、個人事業主が従来の融資で必要となる収入証明書類(確定申告書類、源泉徴収票など)・事業関連書類(事業計画書、青色申告報告書など)といった提出書類が不要。担保や保証人も不要で、融資申し込みをすることが可能です。

④P2P融資

「P2P融資」とは、「お金を借りたい個人」と「お金を貸して利息でお金を増やしたい個人」を結びつける金融プラットフォーム内で行われるオンライン融資です。「個人向けソーシャルレンディング」「マーケットプレイスレンディング」などと呼ばれることもあります。

「P2P」とは「Peer to Peer」の略で、専門の貸金業者ではなく個人同士の融資という意味です。個人同士がプラットフォーム内でマッチングされてお金を貸し借りできるサービスを指しています。

ただし日本では、個人の信用力をどのように判断するのか、という問題があり、普及は進んでいません。海外では「Lending Club(レンディングクラブ)」「prosper(プロスパー)」といったサービスが有名ですが、いずれも日本では参入していません。

⑤プラットフォームに依存しないオンライン融資

  • ECサイト
  • クラウド会計ソフト
  • 決済サービス
  • オンラインバンク

これらのプラットフォームを活用するのですが、特定の(一つの)プラットフォームに依存していないサービスを「プラットフォームに依存しないオンライン融資」と呼んでいます。

プラットフォームが特定されていませんので、融資事業者(貸し手側)はたくさんの事業主(借り手側)からの申し込みが期待できます。

融資を受ける側からしても、どれかひとつでも提携サービスを使っていれば融資を受けることができる可能性が広がります。

Lendy(レンディ)

Lendy(レンディ)は「クレジットエンジン株式会社」が運営する事業者向けのオンライン融資サービスです。

  • クラウド会計ソフト
  • ECプラットフォーム
  • レストラン評価サイト
  • POSレジサービス

といった日本での代表的なプラットフォームと提携しています。これらのプラットフォームでの「入金データ」「出金データ」「(店舗の)予約の混雑状況」「評価サイトでのカスタマー(顧客)からの評価」などのデータを元に与信判断を行います。

メガバンクのオンラインレンディングサービス

2019年は「オンライン融資元年」ともいわれています。これは「みずほ銀行」「三菱UFJ銀行」のメガバンク2行が、オンラインレンディングサービスに参入したためです。

みずほ銀行「みずほスマートビジネスローン」

みずほ銀行が「クレジットエンジン株式会社」と連携して提供するオンラインレンディングサービスです。利用者のデータやAI技術を活用した与信モデルで、申込から融資実行までオンライン完結、最短二営業日で融資実行可能となっています。

三菱UFJ銀行「BizSTATION」

三菱UFJ銀行が提供する法人向けポータルサイトです。このサービスの一つとしてオンラインレンディングを提供しています。決算書などの財務データではなく、入出金データなどに基づいて与信判断を行い、最短2営業日で融資が完了できます。

これらの流れに追随する金融機関が、さらに増えることも予想されます。メガバンクだけでなく地方銀行や消費者金融といった分野にも普及していくことにより、中小企業や個人事業主の資金調達手段が多様化することも期待できます。一方、これらのサービスを利用する場合、日々の取引状況の管理もより重要になってきますので、事業主としてはしっかり情報を入手して、場合によっては専門家の知恵も借りることが求められます。

オンラインレンディングは中小企業向け?

オンラインレンディングが注目を集める理由の一つが「中小企業向け」という点です。これまでメガバンクがカバーできなかった中小企業や個人事業主に対する突発的な小口資金ニーズに対応可能という点です。

大手銀行や制度融資などによる資金調達では、多くの資料を準備する必要があります。資金調達までには多くの労力と時間が必要で、突発的に小口の資金が必要となるスモールビジネスには不向きという場面も多くあります。さらにスモールビジネスでは大企業に比較して信用度が低いと判断されることも多く、それだけ資金調達が困難になってしまいます。

煩雑な融資の審査を簡素化しスピーディに借り入れをしたいという、中小企業のニーズに応える形で進展してきたのもオンラインレンディングの特徴となっています。

日本経済の屋台骨を支えているのは中小企業や個人事業主ともいわれています。各金融機関とも中小企業支援の新たなサービスとしてオンラインレンディングによるサービスを拡大しています。

新型コロナで注目を集める?

2020年初頭からの新型コロナウイルスの拡大は私たちの生活を一変させてしまいました。全世界の金融市場にも大きな影響を与えており、終息の糸口さえ見えていません。2021年になっても第三波のよる再度の緊急事態宣言発令など、元の生活スタイルに戻ることはもはや困難なのかもしれません。

反面、皮肉なことですが新型コロナウイルスの拡大に伴い、オンラインレンディングのシステムがより注目を集めるようになっています。

オンラインレンディングの最大の特徴はスピーディーな資金調達が可能な点です。一方、新型コロナの影響に伴う外出自粛や移動制限などの広がりによって、売上が突発的に激減する事業者が続出しています。当面の運転資金を素早く確保する手段として、オンラインレンディングが活用されています。

またすべての手続きがオンラインで完結するオンラインレンディングでは、来店・対面が不要のサービスです。人との接触を避けるという感染予防対策としても有効的な面も普及を促進しています。

オンラインレンディングの特徴ですか、突発的・短期的に事業資金が不足した際に、ピンチを乗り切るため「守り」の資金繰りに活用することができることから普及しているというのが、なんともいえない実情と感じます。

まとめ

「オンラインレンディング」の普及に伴い、中小企業や個人事業主の資金調達は、いざという場合に即座に資金調達が可能な、いわば「フットワークが軽く」資金調達できる可能性が広がってきています。

一方、オンラインレンディングの利用には一定期間のデータ蓄積が欠かせません。金利面などよりよい条件で融資を受けるためにも、取引や入出金の細かいデータが必要となります。借入側としては意識的に質の良いデータを残すように努力しないと融資条件が悪くなり、結果的に金銭的に損をしてしまうのです。

「オンラインデータ」が「お金になる」時代が到来したといっても大げさではありません。時代の流れに取り残されないように、情報管理の徹底を図っていくことが重要でしょう。

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ライター紹介 ライター一覧

若松 貴英

若松 貴英

保有資格:2級ファイナンシャル・プランニング技能士(中小企業主資産相談業務)・AFP(日本FP協会認定)/金融業務検定(法務上級)/銀行業務検定(法務2級・財務3級・税務3級)など。銀行勤務時は融資のスペシャリスト」(悪く言えば「融資しか知らない」)として勤務していました。そのため「借入」に対しる知識や経験には自信があります。