1. 借入DX
  2. お金に関する豆知識
  3. モラルハザードとは何?防止策は?

モラルハザードとは何?防止策は?

 2020/04/02 お金に関する豆知識   11,153 Views

モラルハザードは本来は保険業界で使われていた用語です。モラルとは道徳や倫理、ハザードは危険や障害物という意味があります。一般的には道徳観の欠如や倫理観の欠如といった意味で使われますが、経済では安全対策がかえってリスクを増大させることを指します。

危険回避の手段が整備されたことによって、かえって注意が散漫となるのがモラルハザードです。

Sponsored Link

モラルハザードとは?

元は保険用語

モラルハザードは、もともとは保険用語です。次第に便利な言葉として様々な場面で使われるようになり、道徳の危機や倫理の欠如といった意味で定着しています。

事例
たとえば、「企業の行き過ぎた売上至上主義から生じる不祥事はモラルハザードだ」などといった文脈で使われています。「モラル(moral)」とは「倫理」や「行動規範」といった意味で、「ハザード(hazard)」とは「危険」「危機」といった意味です。

モラルハザードを倫理の欠如という意味で使うのは本来的な使い方ではなく、日本独自のカタカナ語と言ってもいいでしょう。

保険用語として使われるときには、「被保険者や保険契約者」が保険に入っていることに安心したせいで不注意による事故を起こす危険があるという意味になります。保険が準備されているから、リスクを回避しようとする意識が薄れて、リスクを一層促進させてしまう行動を指して使います。

また、会社の業績が不振であるにもかかわらず、経営陣がその責任を明確にしないまま辞任しなかったり、高額な退職金を受け取ったりする場合にもモラルハザードという言葉が使われます。

日本では、1990年代後半のバブル崩壊に伴う金融機関の不祥事が相次いだときに報道で使われるようになり、それ以来「倫理の欠如した企業の行動」を端的に表す言葉として便利に使われるようになっています。

現在でも金融機関だけでなく、企業が倫理観を欠いた節度のない利益追求に走るような状況を言い表すときに使われています。

分かりやすい事例

1.保険のモラルハザード

保険の加入者が「保険に入っているから、多少の問題行動を取ってもいい」と考えてリスク回避や注意義務を怠るときに、モラルハザードが起こっていると考えられます。

たとえば医療保険に加入している人が「医療保険でまかなえるから大丈夫」と考えて、ちょっとした不調を感じただけで病院に行ったり、自分で病気の予防などを行わなかったりするときに、モラルハザードが起こっています。

また、自動車の任意保険に加入している人が「事故を起こしても補償してもらえる」と思って運転に集中しないというのも、モラルハザードの代表的な事例です。

2.年金制度のモラルハザード

年金制度のモラルハザードもあります。たとえば国民年金保険料を納付しないことです。「年金なんか支払わなくていい。年金受給の歳まで生きてしまったら生活保護を受ければ良いじゃないか」と考えて、年金保険料を納めないのは、典型的なモラルハザードです。

3.企業のモラルハザード

経済学的には、倫理観の欠如ではなく、見えないところで注意を怠るときに「モラルハザードが起こっている」とみなします。たとえば、従業員が見えないところで仕事をサボったところで給料は変わらないと考えるとき、モラルハザードが起こっていると考えます。

一般企業ではマンパワーに依存したチェックが必要なときに「この程度なら大丈夫だ」と考えてチェックを怠ったり、決められた工程で仕事をしなかったりするといったモラルハザードが見られます。

モラルハザードが起こした代表的事件

コスモ信用組合

モラルハザードはどの業界であっても、またどの組織でも発生する可能性があります。医療や保険に特有のものではありません。モラルハザードの実例として良く使われるものにコスモ信用組合の経営破綻が取り上げられます。

コスモ信用組合は、東京都に本店を置いていた信用組合で、バブル崩壊後の1990年代に高金利をうたった「マンモス定期」という定期預金商品の販売を始めます。これによって多額の預金を集めることに成功します。

1995年6月には預金高が4300億円と、信用組合とは思えない程度にまで成長します。しかし、バブル時代に取得した不動産の価値が暴落して、さらに不正な大口融資の不良債権化が発覚します。ここでコスモ信用組合は、関係者の責任を不明確にして誰も不良債権を処理しようとしませんでした。この部分が典型的なモラルハザードです。

バブル期に取得した株式や土地が暴落しているのに、それを放置して、自己資本の2割までと定められていたはずの大口融資規制に違反して、多額の不良債権を発生されてしまいます。さらに大口預金が引き上げられる事態となり、たった1日で預金の6分の1が流出するという取り付け騒ぎを起こしています。

結果的に資金繰りに行き詰まったコスモ信用組合は経営破綻し、破綻後の預金者保護のために日本銀行と預金保険機構による多額の金融支援が実施されて、預金者の資金は元本を含めて全額が保証され、事件は収束しました。

すでにバブルが崩壊していたにもかかわらず、見通しの甘い拡大策を採ったコスモ信用組合のモラルハザードは厳しく批判されて、その後の金融機関に対する監督規制が強化されることにつながっています。

不二家

2006年に菓子メーカーの不二家が起こした品質管理関連の事件もモラルハザードの事例として良く取り上げられます。不二家は「消費期限切れ牛乳を使用」し、さらに「製品の消費期限の改ざん」という2つの不正を行って、社会問題化にまで発展したことがあります。

2006年1月10日、不二家は「消費期限切れ」の牛乳をシュークリームの製造の際に使用していたと報じられます。翌日、社長らが釈明会見を開いていますが、この席上で消費期限切れの鶏卵を用いたシュークリーム、消費期限切れのリンゴの加工品を使ったアップルパイなどを出荷していたことを認めています。

この時点で不二家は、消費期限切れの牛乳を使用した件について、定年後に再雇用した元菓子職人の個人的な判断であったと説明して組織としての責任を回避しようとしました。ところが、その後の調査では不二家は組織ぐるみで不正を行っていたことが発覚します。

埼玉工場では、消費期限切れの牛乳と卵を使用して製品を作ったケースが15件発覚していますが、そのうち2件は管理者の指示によって行われた不正でした。さらに「製品の消費期限の改ざん」が明るみに出ます。

不二家は2004年4月から2006年の10月にかけて、自社が製造したプリンの消費期限を1日延ばして表示していました。

この改ざんは、工場長から生産管理課長、製造課長などが加担しており、管理不行き届きという問題ではなく、法人が統一された意志によって不正を働いていたことが明らかになります。

マンパワーに依存したチェック体制が必要なときに「この程度なら大丈夫だ」と思い、さらに決められた工程で作業をしないことを会社ぐるみで行っていたという点で、典型的なモラルハザードと言えるでしょう。

雪印グループ

企業のモラルハザードの事例として最も有名なものが雪印グループをめぐる不祥事でしょう。

雪印乳業大阪工場で製造された製品を原因とする食中毒が2000年6月に発生し、1名の死者を含む約1万3000人の被害者を出す大きな事件にまで発展します。

食品メーカーとして「無事故で安全な商品を提供する」ことが期待されているにもかかわらず、食中毒発生に伴う製造中止や製品回収、損害賠償という企業にとって致命的となる状態が発生しました。

この事件には様々なハザードが関係していますが、このうち経営者の判断上にモラルハザードが強く作用していると言われています。このモラルハザードによって、コスト偏重の効率経営や衛生管理の軽視、食中毒発生後の通報の遅れなどをもたらしています。

その後の2002年1月には、子会社の雪印食品による食肉自走事件も発覚しています。この事件には、狂牛病の発生による売上減というハザードが関係していますが、業者のモラルに依存した牛肉の買取制度が悪用されたという点で、大きなモラルハザードが発生したと考えられます。

虚偽表示の黙認や問題発覚前に発生した内部告発の軽視などは、すべて経営者の経営判断上のモラルハザードです。

モラルハザードへの対策とは?

保証金の預託

モラルハザードを抑止するための有効な方策として、「保証金を積む」というやり方があります。

たとえば、アメリカでは建設業者が道路の敷設やビル建築などのプロジェクトと請け負った場合、約束の期日までに約束した通りの方法で完成できない場合の保証金を預託されられることがあります。もし約束通りものが達成できないときには保証金が没収されます。

保証金が没収となると、企業は利益を失うばかりか逆に損失を出すことになるので、企業は約束を履行するために契約通りの作業をします。契約通りにするための強いインセンティブが与えられたことになります。日本でも、会社が銀行から融資を受けるときに経営者の個人的資産を保証金として担保に入れるという慣例があります。

会社が倒産すると経営者は自分の財産を没収させられ、創業者が一族で路頭に迷うということになりかねないため、経営者は会社を倒産させないように努力せざるを得ません。

このような明確な形で保証金を積んだり担保を入れたりする以外にも、保証金に似た考え方や仕組みは数多く採り入れられています。アメリカの大企業には、社内で訓練を受けた社員が入社3年以内に辞めるときには会社に対して高額の違約金を支払うことが雇用契約に組み込まれることがあります。

こうした保証金の預託というのは、契約者に確実に契約を履行させるためにインセンティブとして有効に働く可能性があります。

インセンティブ契約

モラルハザードが発生するには3つの条件があると言われています。

1.取引を行う双方に利害の対立があること。

つまり、一方の犠牲のうえに他方の利益が生じるということです。依頼者・消費者・利用者は製品やサービスの対価を支払いますが、その一方で会社・メーカー・提供者は対価に見合ったものを提供しなければなりません。これが利害の対立です。

2.利害が異なる者の双方を取引に至らせる理由があること。

利害が対立している2者間には取引関係に至らなければならない理由がある状況であるときに、モラルハザードは発生しやすくなります。

銀行は預金者からお金を預かりますが、ここには契約が必要で、むやみに人は銀行にお金を預けられませんし、銀行も契約者でなければお金を預かることはありません。

3.実際に契約が遵守されているかどうかを調べたり、遵守を強制させることが技術的・経済的・人的資源としても困難であること。

検査したり監査したりすることが難しいときや、監査に大きな費用がかかるときにモラルハザードは発生しやすくなります。

たとえば労働者はサボったり怠けたりしないようにするため、タイムレコーダーによって記録を義務付けられることが多くあり、遅刻・早退に対して減給や解雇などの処罰が課せられます。タイムレコーダーは立派なモラルハザード対策としても機能していると言えます。

さらに、モラルハザードの発生を防ぐためには、結果の良し悪しによって報酬を与えたり罰金を課したりすることによって、仕事の効率性・正確性を保つことが効果的です。たとえば営業マンに対して大きな仕事を取ってきたら報酬を与えるといったことです。

プロ野球選手には、本人に目標を設定させて達成したときには報酬を上げるという契約が行われますが、これは典型的なインセンティブです。

保険で自己負担分を設ける

保険に関するモラルハザード対策として良く使われるのが、リスク分担です。

たとえば、自動車の車両保険には「免責制度」が設けられていますが、これは典型的なモラルハザード対策です。保険の加入者にもある程度のリスクを分担させることによって、事故が発生したときには決めた免責の部分までは契約者が自己負担しなければなりません。

これによって、「保険に入っているから大丈夫だ」と慢心することなく、正しい運転をしようという意欲につながります。

また、保険に等級制度を設けてあるのもモラルハザード対策です。自動車保険では契約の前年の事故歴や保険の使用回数に応じて等級が決定されます。それによって保険料を算出しますが、保険の加入者が保険期間中に事故を起こさなければ次回支払う保険料が安くなり、逆に事故を起こせば保険料が上がります。

この制度によって加入者は少しでも安全運転を心がけるようになりますし、事故を起こさないように注意するという効果が期待できます。

医療保険においても、モラルハザード対策は行われています。たとえば湿布薬の処方枚数を制限したり、時間外の受診のときには通常の診療費に時間外料金がプラスされます。

これによって、「何かあったら病院に行ったらいい」という安易な行動を控えさせるという効果が期待できます。

まとめ

モラルハザードはあらゆる場面で発生するリスクがあります。対策を採っていればある程度防止することが可能です。単に「慢心が起こすもの」「サボっている人を叱ればいい」というものではありません。

システムとして対策を組み込むことが、モラルハザードを発生させないために必要です。
Sponsored Link

\ SNSでシェアしよう! /

借入DXの注目記事を受け取ろう

NO IMAGE

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

借入DXの人気記事をお届けします。

  • 気に入ったらブックマーク! このエントリーをはてなブックマークに追加
  • フォローしよう!

ライター紹介 ライター一覧

若松 貴英

若松 貴英

保有資格:2級ファイナンシャル・プランニング技能士(中小企業主資産相談業務)・AFP(日本FP協会認定)/金融業務検定(法務上級)/銀行業務検定(法務2級・財務3級・税務3級)など。銀行勤務時は融資のスペシャリスト」(悪く言えば「融資しか知らない」)として勤務していました。そのため「借入」に対しる知識や経験には自信があります。

関連記事

  • パニック障害でも仕事を続けたいときに覚えておきたい3つのことをわかりやすく解説

  • 口座担保型融資の危険性と手口

  • 生命保険で受け取ったお金にかかる税金はいくら?ケース別に解説

  • JICCとは何?借入審査とどのように関わっているのか詳しく解説!

  • 無職でも確定申告したほうがいいケースがある?

  • 最近よく聞くフィンテックとは?金融とテクノロジーが生み出す未来像