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相続時精算課税制度とは?概要や手続き、メリットなどを分かりやすく徹底解説!

お金に関する豆知識   922 Views
2015年に相続税が改正され基礎控除が4割削減されてより多くの人が相続税の対象になり、相続対策として生前に贈与する暦年贈与に関心が高まっています。

最高税率が50%から55%に引き上げられ税負担も増えたことで、相続税の負担を減らす方法として生前贈与が注目される状況になりました。

この暦年贈与と対照的な制度が相続時精算課税制度で、被相続人にあたる子や孫の間で将来相続される財産を前渡しできるようにする制度になります。

暦年贈与と相続時精算課税制度のどちらを利用するかは個々のケースによって異なるので、それぞれの特徴を正確に理解して適切な方法を選択することが必要です。

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相続時精算課税制度の概要

相続時精算課税制度は生前贈与をした場合に納めなければならない贈与税の代わりに相続の際に相続税を納める税金の制度で、相続清算の際は合計2,500万円まで贈与税がかからず超えた部分に一律20%かかります。

相続時精算課税制度創設の背景

生前贈与の場合は贈与税がかかり相続税に比べると控除額が低いことや相続税が相続財産を分配してから納めるので相続した預貯金などから納められることに比べて、贈与税は相続者に困難が伴うことが予想される背景があって相続時精算課税制度が創設されました。

適用対象者

創設の背景から適用される範囲は限られていて、贈与する側は60歳以上の父母ま又は祖父母であって贈与される側は20歳以上の子や孫が対象で、贈与される側が自分で贈与税か相続時精算課税か選択することができます。

税額の計算

相続時精算課税制度は相続の際に生前贈与もまとめて税金を清算しますが、土地や建物など価値が変動する財産の贈与については相続時の評価額ではなく贈与時の評価額で計算されます。

そのため相続時に価値が低くなっても贈与を受けた時の価値のままで相続時に承継すれば良かったと思う場合もあり、不動産価格が高騰して生前贈与を急ぐ時以外は避けた方が賢明です。

これから上がる場合は、贈与時が相続時より評価額が低いので節税効果があると思われます。

贈与税額の計算

相続時精算課税の適用を受ける贈与財産については、その選択をした年の以後の相続時精算課税にかかわる贈与者以外の者からの贈与財産と区分して、1年間に贈与を受けた財産の価額の合計額を基に贈与税額を計算します。

贈与税の額は贈与財産の価額の合計額から複数年にわたり利用できる特別控除額を控除した後の金額に一律20%の税率を乗じて算出しますが、限度額2,500万円で前年以前にすでにこの特別控除額を控除している場合は残額が限度額になります。

相続時精算課税を選択した受贈者が相続時精算課税にかかわる贈与者以外の者から贈与を受けた財産については、その贈与財産の価額の合計額から暦年課税の基礎控除額110万円を控除し贈与税の税率を適用し贈与税額を計算します。

相続税額の計算

相続税額は相続時精算課税にかかわる贈与者が亡くなった時に、それまでに贈与を受けた贈与財産の価額と相続や遺贈で取得した財産の価額を合計した金額を基に計算した相続税額から、既に納めた相続時精算課税にかかわる贈与税相当額を控除して算出します。

その際の相続税額から控除しきれない相続時精算課税にかかわる贈与税相当額については、相続税の申告で還付を受けることができます。

適用手続き

相続時精算課税を選択しようとする子または孫の受贈者は、その選択にかかわる最初の贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までの贈与税申告書の提出期間に、納税地の所轄税務署長に相続時精算課税選択届出書を戸籍謄本などの書類とともに提出することになっています。

相続時精算課税は子または孫の受贈者が父母または祖父母の贈与者ごとに選択できますが、一旦選択すると選択した年以後贈与者が亡くなるまで継続して適用され、暦年課税に変更することができません。

相続時精算課税のメリットとデメリット

相続時精算課税で贈与時に2,500万円まで非課税ということだけを考えると節税に非常に効果があるような印象ですが、相続時には生前贈与の分まで合算して相続税を計算する必要があります。

そのように相続時精算課税は利用すれば必ず税負担が軽減される制度ではないので、自分がどのようにしていきたいのかをしっかりと考えた上でメリットとデメリットを検討することが重要になります。

メリット

相続時精算課税のメリットは税金の支払いを先へ伸ばすことができる点であり、税金が安くなるわけではありませんが2,500万円までの非課税枠においては生前贈与の際に贈与税を考慮する必要がなくなる有利な点があります。

具体的には、生前贈与で財産を渡しておきたいものの贈与税が高額になるために二の足を踏んでいるような場合にメリットになると言えます。 ま

た節税につながる使用方法としては、事業承継の際に何らかの事情で自社株式の評価が一時的に低くなった場合に、相続時精算課税を利用して評価額が低いうちに自社株式を後継者に移転させるという方法を取ることができます。

このように将来的に価値が上がっていくと見込まれるものや賃貸不動産のように継続して利益を生むものを生前贈与して、将来の相続税を節税する利用方法も考えられます。

デメリット

ネガティブな評価
相続時精算課税のデメリットは、一度この制度を利用してしまうとその後の贈与はすべて相続時精算課税制度が継続され暦年課税に戻れないことがあげられます。

暦年贈与の場合は年ごとに贈与により取得した財産に対して課税をしていきますが、毎年110万円までは基礎控除で贈与税が課税されない非課税枠があります。しかし相続時精算課税を利用すると、この基礎控除額は使用できなくなります。

生前贈与による節税を行う場合は暦年贈与の非課税枠を活用して徐々に財産を移転させる方法がありますが、相続時精算課税利用の場合はこの非課税枠を活用することができなくなります。

そのため非課税枠を利用しながら長期的に生前贈与を行って将来の相続税負担を軽減したい場合は、相続時精算課税は私用しない方が良いと考えられます。

また土地の場合は生前贈与をしてしまうと、相続税の特例である「小規模宅地等の特例」が利用できなくなるというデメリットもあります。

相続時精算課税制度を活用するポイント

円満な相続を実現するためには生前の相続対策が不可欠になりますが、相続対策として相続トラブル対策や相続税対策、納税資金の確保が必要になります。

この中で相続税対策の1つの選択肢に、相続時精算課税制度を活用することがあります。

相続時精算課税制度の活用

相続時精算課税制度は親や祖父母が20歳以上のこどもや孫に贈与をする時最大2,500万円まで当面の間非課税となる贈与税の特例制度で、この制度を活用すると相続税の納税を後回しにして相続財産だけ先渡しすることが可能になります。

活用するケースと注意点

相続時精算課税制度を活用する場合、例えば親が子どもに財産を贈与すると原則として贈与税がかかりますがこの制度を利用すれば2,500万円までは贈与税がかからず、相続まで待たせずに今ある財産を使わせたい親の思いや相続まで待てない子どもの事情がある場合は好都合の制度になります。

しかし相続時精算課税制度を活用しても後の相続が発生した時に相続税がかかることや、一度相続時精算課税制度を適用すると暦年贈与を利用できなくなることに注意が必要です。

また贈与者は贈与をした年の1月1日に60歳以上となっている父母又は祖父母であることが必要で、受贈者は贈与を受けた年の1月1日に20歳以上の子どや孫に限定され、年齢が該当しない場合は相続時精算課税制度が適用されないことになります。

相続時精算課税制度の申告と手続き

贈与の際に相続時精算課税制度を利用することになった場合、当初に贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までの間に贈与税の申告をして、その際に「相続時精算課税選択届出書」という書類を作成して手続きをする必要があります。

まとめ

2015年に相続税が改正され基礎控除が4割削減され多くの人が相続税の対象になり、最高税率も50%から55%に引き上げられたことで生前贈与が注目されています。

暦年贈与と対照的な制度が被相続人に財産を前渡しできる相続時精算課税制度で、暦年贈与と相続時精算課税制度のどちらを利用するかの選択が必要です。

相続時精算課税制度は生前贈与をした場合贈与税の代わりに相続の際に相続税を納める税金の制度で、相続清算の際は合計2,500万円まで贈与税がかからず超えた部分に一律20%がかかります。

相続時精算課税制度は相続の際に生前贈与もまとめて税金を清算しますが、土地や建物など価値が変動する財産の贈与は相続時の評価額ではなく贈与時の評価額で計算されます。

相続時精算課税は利用すれば必ず税負担が軽減される制度ではないので、自分がどのようにしたいかを慎重に検討することが重要です。円満な相続の実現には生前の相続対策があり、相続トラブル対策や相続税対策、納税資金の確保が考えられます。
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ライター紹介 ライター一覧

若松 貴英

若松 貴英

保有資格:2級ファイナンシャル・プランニング技能士(中小企業主資産相談業務)・AFP(日本FP協会認定)/金融業務検定(法務上級)/銀行業務検定(法務2級・財務3級・税務3級)など。銀行勤務時は融資のスペシャリスト」(悪く言えば「融資しか知らない」)として勤務していました。そのため「借入」に対しる知識や経験には自信があります。