学資保険は満期になったら税金がかかる?
学資保険は満期や祝金でお金がもらえる保険ですが、税金はかかるのでしょうか?
実は一般的な契約であれば税金がかからないことがほとんどです。
税金は、払い込んだお金よりも受け取るお金が50万円を越える時にかかります。学資保険は満期金を200万~300万円のプランにされる方が一般的に多いようですが、この額であれば現在の返戻率ですとまず税金はかかりません。
ただし、契約者と受取人が異なるケースや学資年金として受け取るケースなど、税金がかかるケースというのはいくつかあります。
どういった場合に税金がかかってくるのか、またどのような対策をすれば余計な税金を支払わずに節税できるのかなど、学資保険と税金について解説していきます。
Contents
学資保険で税金がかかるケースとは?
学資保険は受取人が誰かで税金が違ってきます。また、学資金の受け取り方によっては税金がかかってくることもあります。
受取人 | 税金の種類 | ケース | ||
---|---|---|---|---|
➀ | 契約者本人 | 所得税 | 一時所得 | 50万円以上増えたとき |
➁ | 雑所得 | 学資年金として受け取ったとき | ||
➂ | 契約者以外 | 贈与税 | 契約者と受取人が違う場合 |
➀ 50万円以上増えた場合は『一時所得』
例…契約者本人が受取人である場合
学資保険で一括で受け取る満期金は通常、一時所得に分類されます。一時所得とは、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の所得で、労務や役務の対価としての性質や資産の譲渡による対価としての性質を有しない一時の所得をいいます。
〈一時所得の計算方法〉
所得税の計算方法は次のようになります。
満期保険金-払込保険料総額-特別控除額(最高50万円)
特別控除額の50万円があるため、払い込んだ保険料よりも50万円以上多く返ってこなければ税金がかかりません。例えば、現在販売中の学資保険の返戻率は104%程度です。300万円の満期金の場合、払込保険料は288万円程度になります。その差額は12万円ですので、税金がかからないことがわかります。
➁ 学資年金として受け取ったときは『雑所得』
例…300万円を一括ではなく、4年間で75万円ずつなど学資年金として受け取る場合
学資保険の保険金の受け取り方には、満期金を一括で受け取る方法と、もう一つ、学資年金として毎年分割で受け取る方法があります。最終的に受け取る金額は一緒でも、この受け取り方になると一時所得ではなく雑所得に該当します。雑所得は一時所得と同様に所得税の一種ですが、一時所得のような特別控除がありません。
〈雑所得の計算方法〉
雑所得の計算方法は次のようになります。
学資年金-(学資年金×払込保険料総額÷学資年金受取総額)
では、次のケースの雑所得はいくらになるのかみてみましょう。
- 学資年金額:75万円
- 学資年金受取総額:300万円
- 払込保険料総額:288万円
75万円-(75万円×288万円÷300万円)=3万円
3万円が課税対象として所得税や住民税がかかります。条件としては学資金を分割して受け取ること以外、一時所得の計算をしたときと同じなのですが、分割で受け取るだけで税金がかかってしまうことがわかります。
ただし、給与所得者の場合には給与所得と退職所得以外の金額が20万円までは非課税となります。現在の返戻率104%程度の学資保険であれば受取総額300万円の場合でも3万円なのですから、かなり高額な契約でなければ非課税で済むでしょう。しかし、自営業者の場合にはこの非課税の枠がありませんので、課税されます。
いくら課税されるかは契約者の所得によって違ってきますが、仮に所得税率10%、住民税率10%だとすると、
雑所得3万円×(所得税率10%+住民税率10%)=6,000円
となり、6,000円の税金がかかる計算になります。これを毎年納めることになりますので、学資年金を受け取る4年間で2万4千円の税金を支払うことになるわけです。それほど大きな額ではないかもしれませんが、現在学資保険の返戻率が下がっていてそれほどプラスにならないことを考えますと、この出費は少々気になるところです。
〈学資年金タイプの学資保険はどれ?〉
では、雑所得の対象となる学資年金タイプのものは現在販売されている学資保険だとどれになるのでしょうか。
保険会社名 | 学資保険名 | プラン名 | 備考 |
---|---|---|---|
ソニー生命 | 学資保険スクエア | 学資保険Ⅲ型 | – |
明治安田生命 | つみたて学資 | – | – |
日本生命 | ニッセイ学資保険 | こども祝金なし型 | – |
日本生命 | ニッセイ学資保険 | こども祝金あり型 | こども祝金は一時所得、学資年金は雑所得の対象 |
かんぽ生命 | はじめのかんぽ | 「大学入学時+在学中」の学資金準備コ-ス | 学資祝金および満期保険金の場合は雑所得 |
アフラック | 夢みるこどもの学資保険 | – | 学資一時金は一時所得、学資年金は雑所得 |
第一生命 | こども応援団 | – | 学資金・満期保険金は雑所得 |
第一生命 | Mickey | – | 学資金・満期保険金は雑所得 |
こうしてみてみますと、意外と多くの学資保険が雑所得の対象となることがわかります。ちなみに、一時所得となる満期金タイプの学資保険はソニー生命の学資保険スクエアⅠ型・Ⅱ型、フコク生命のみらいのつばさ、かんぽ生命の「大学入学時」「小・中・高+大学入学時」の学資金準備コースなどです。
Ja共済こども共済「学資応援隊」については一見学資年金タイプのようですが、電話で確認してみたところ、5回ある学資金のうち、4回は「受取=払込保険料」として税金がかからず、5回目の満期のときに払込保険料との差額が50万円を超える場合は一時所得として課税対象になるのだそうです。
学資年金タイプはまとまった教育資金を受け取れないものの、なにかとお金のかかる在学中の学費を毎年カバーしてくれるというメリットがあります。また、保険会社は満期金を一括で受け取るタイプよりも長く資金を運用することができるため、そのぶん返戻率がよいというメリットもあります。
このタイプの学資保険を選ばれる際には、いくらプラスになって税金でいくら引かれてしまうのかなど、あらかじめ計算しておくといいでしょう。
➂ 受取人と契約者が違う場合には『贈与税』
例…祖父母が契約者で孫が受取人など契約者以外が受け取る場合
これまで紹介した一時所得のケースや雑所得のケースでは、契約者=受取人でした。
しかし、受取人が子どもの場合など、契約者本人ではないケースになりますと、保険料を負担していない人が満期金を受け取ることとなります。これはお金を贈与されたのと同義になりますので贈与税がかかります。普通に親が子どものために教育資金や生活費を出すことは贈与にはなりませんが、学資保険として受け取ると贈与になってしまうのです。
とくに、祖父母が孫のためにと学資保険に加入するケースなどは、注意が必要です。
〈贈与税の計算方法〉
贈与税は110万円を超えると税金がかかります。
(満期保険金-特別控除額110万円)×税率-控除額
特別控除額が110万円あるものの、一般的な満期保険金は200万円~300万円程度ということを考えますと、学資保険は贈与税で税金がかかるケースが多いのです。
税率と控除額は基礎控除後の課税価格によって違ってくるので、満期保険金額から基礎控除額を差し引いた額を次の速算表にあてはめて計算します。
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | – |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
3,000万円超 | 55% | 400万円 |
300万円の満期金を契約者の子どもが受け取った場合にはどうなるかというと、
300万円-110万円=190万円
となり、上記の速算表から200万円以下の税率は10%となっていますので、19万円の贈与税が発生するということがわかります。コツコツ18年間貯めてきたのに19万円も税金でもっていかれてしまうと、せっかく返戻率の高い学資保険に入っても意味がありません。
他に税金がかかるケースは?
学資保険で税金がかかるのは一般的には上記のようなケースなのですが、そのほかこんな落とし穴もあります。
育英年金は相続税・所得税がかかる
学資保険に特約で追加できる育英年金(養育年金)は、契約者である親が死亡した場合に学資保険の満了までの期間、定められた年金が支払われる制度です。死亡後も保険契約は継続し、育英年金とは別に給付金や保険金も受け取ることができます。
しかし、この育英年金の受取によって税金がかかってしまうのです。
育英年金の受取人は子どもに設定されているのが一般的ですが、まず子どもが受け取るということで相続税がかかります。相続税は、「将来受け取る育英年金の受給権」に対して課税されます。ただし、この相続税に関しては基礎控除がかなり大きいため、多くの場合この範囲内になるでしょう。注意したいのはそれ以降の所得税です。
公的年金や年金保険といった毎年受け取るものは雑所得、毎年ではないものは一時所得に分類されます。育英年金の場合、年金ですので雑所得となります。
つまりどういうことかというと、所得が年間38万円を超える場合には受け取るのが子どもだとしても税制上は収入があるとみなされ、課税所得として子どもでも所得税・住民税を納めなければならなくなるのです。
さらに所得税を支払う=収入がある、ということになりますと、親の扶養ではなくなってしまいます。 例えば父親が亡くなって母子家庭になった場合、母親の扶養から外れてしまうことで、自治体の援助などを受けられなくなる可能性がでてくるのです。また、育英年金を受け取っている間は毎年確定申告が必要になってきます。
親の死後のために備えるための育英年金なのに、これでは本末転倒です。育英年金を付ける場合には受取人を母親にするなどの対策をしたほうがいいかもしれません。
解約時返戻金に税金がかかる場合も
学資保険を解約したときに受け取る解約返戻金ですが、こちらも満期金同様、課税の対象になります。解約返戻金は満期金の受取と同じく一時所得に分類されますが、上記のように50万円の特別控除があるので税金がかかることはほとんどありません。
契約者と受取人が同一でない場合には贈与税がかかります。贈与税では基礎控除110万円を超えると税金が発生しますので、ある程度の年数の学資保険を解約する場合には注意が必要です。
税金対策としてできることは?
学資保険は積み立てというイメージが強いですが、上記のように、学資保険は満期金の受取などお金の受取の仕方によって税金がかかってきます。
では税金がかからないように学資保険を利用するにはどうしたらいいのでしょうか?
1. 満期保険金が高額の場合は分割受取
一時所得の場合一般的な契約であれば税金がかからないことがほとんどですが、高額な契約の場合には契約を分割して分割受取にすることで節税になるケースもあります。
- 受取総額(満期保険金):800万円
- 払込保険料総額:727万円
- 返戻率:110%
この場合の一時所得は
800万円-727万円-特別控除額50万円=23万円
となり、23万円が一時所得として課税対象となります。
課税は年単位で行われますので、もしも高額な満期保険金を受け取るのであれば、契約を2つに分割し、受取時期を1年ずらすという手もあります。例えばこの場合、400万円の契約を2つにすると、どちらも特別控除の枠内に収まるので最終的に受け取れる合計額は同じでも税金がかかりません。
ただしこの方法ですと、一歩間違えば必要なときにお金が手元にないといった事態に陥るリスクもあります。いつ現金がどのくらい手元にあるようにするのか、しっかり計画を立てて契約する必要があります。
2. 自営業者は学資年金タイプを避ける
学資年金タイプの学資保険は雑所得に該当します。一時所得のように特別控除がないため、せっかく高い返戻率の学資保険に入っても税金で持って行かれてしまっては意味がありません。
給与所得者の場合には20万円までは非課税になりますので、その範囲に収まるよう受取額を調整したプランにすれば税金を支払わずに済みます。ですが、自営業者の場合には非課税枠がなく税金がかかってしまいます。
なにかとお金のかかる在学中の学費をカバーできるというメリットは非常に魅力的ですが、もしも節税を重視される場合には、このタイプの学資保険を避け、満期金一括で受け取るタイプ(一時所得)の学資保険を選ぶというのも一つの手です。
3. 贈与税なら年間110万円以内に
もしも契約者と受取人とが別の契約になってしまうのであれば、年間の贈与額が110万円以内におさまるようにしましょう。他の贈与がなければ、特別控除額110万円以内に収まれば贈与税はかかりません。
学資保険は生命保険控除の対象にも
これまで「学資保険には税金がかかる」という内容について解説してきましたが、実は学資保険の保険料は年末調整や確定申告で控除の対象になります。満期金等受取の際には税金がかかるものの、申請すれば毎年控除の対象として控除を受けて所得税と住民税を節税できるのです。
生命保険控除について詳しくは「学資保険は年末調整で控除の対象になる?」でも説明しています。
まとめ
学資保険にかかる税金については、一般的な加入方法であればまったくかからないかかかっても少額ですみますし、逆に生命保険料控除を受けて節税することも可能です。
ただし学資年金で受け取る場合や契約者と受取人が違う場合、また自営業者の場合などケースによっては税金が発生する場合もあります。
返戻率が下がってしまっている現在、税金がかかってしまっては返戻率の高い学資保険に入ってもあまり意味がなくなってしまいます。
加入方法を工夫すれば余計な税金を支払わずに済むケースもありますので、契約前にしっかり確認しておきましょう。